すっかりしょげてしまって

 僕たちは、すっかりしょげてしまって、なんだか、こんなところで、のんきに遊んでいるのは、ひどく悪い事のような気もして来て、「狐には穴あり、鳥には塒《ねぐら》、か。」と僕が言ったら、兄さんは、「視《み》よ! 新郎《はなむこ》をとらるる日きたらん。」と言って笑った。こんな会話も、繁夫さんたちが聞いたら、さぞ鼻持ならない、気障《きざ》ったらしいもののような気がするのだろう。そんなら僕たちは、どうすればいいのだ。僕たちは、ちっとも思い上ってなんかいないのだ。いつでも、とても遠慮をしているのに。ああ、東京へ帰りたい。田舎は、とてもむずかしい。ゴルフをつづける気力も無く、僕たちは悲しい冗談を言い合いながら、家へ帰った。 お昼には、また一つ失敗した。これは大きな失敗だった。しかも、それは、一から十まで僕ひとりが悪かったのだから、たまらない。 お昼ごはんをすましてから、僕は兄さんをお庭にひっぱり出して、写真をとってあげていたら、垣根《かきね》の外で石塚《いしづか》のおじいさんの孫が二人、こそこそ話合っているのが聞えた。「おらも、三つの時、写真とってもらっただ。」男の子が得意そうに言う。「三つん時?」妹の声である。「そうだだ。おらは帽子かぶってとっただ。だけんど、おらは覚えてねえだ。」 兄さんも僕も噴き出した。「遊びにいらっしゃい。」と兄さんは大きい声で言った。「写真をとってあげますよ。」 垣根の外は、しんとなった。石塚のおじいさんは、昔この別荘の留守番をしてくれていた人で、いまもやはり此《こ》の辺に住んでいるのである。お孫さんは、上の男の子が十くらい、下の女の子が、七つくらい。やがて二人は、顔を真赤にして、ちょこちょこと庭へはいって来て、すぐに立ちどまり、二人とも、いよいよ顔を燃えるように赤くしてはにかみ、一歩も前にすすまない。その、もじもじしている様は、とても上品で感じがよかった。「こっちへいらっしゃい。」と兄さんが手招きして、それから、ああ、僕は実にまずい事を言ってしまった。「お菓子をあげるぜ。」

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